経済

2010/03/21

終わらない「トヨタ」

おととしの11月、自分は「最強トヨタ、終わりの始まり」「昨日のトヨタの記事」で、トヨタを批判する記事を書きました。しかしトヨタは終わらないだろう、と最近おもうようになりました。きっかけは通所している就労支援センターでの内職作業です。障碍をもつメンバーだけで工賃ひとつ数銭という作業をしていますが、内職とはいえ、ひとつ数銭という工賃とはいえ、ものづくりであり、付加価値をつけて取引先に納品していることには違いないのです。このことの意味を通所し始めて2週間目くらいから感じるようになりました。10年間勤めた大手スーパーでは銭単位の付加価値もつけられない、コストをかけるための作業に満ち満ちていました。それはよそでもそうらしいのです。誰も読まない日報や書類書きに翻弄され生徒や児童と触れ合う時間がまともにとれないと嘆く先生や保育士さんを何人か知っています。

ものづくりの現場では様々なことが起きます。チームワークで作業を進めているから、一人の勝手な行動や判断ミスが不良品をつくったり、最終的な納品数の不足につながったりします。三障碍の人が共同でやっていますから、知的障碍をもち養護学校を卒業してすぐにこの世界に飛び込んだ若い人もいれば、就労経験がありかなり年配の身体障碍の方、自分みたいな精神障碍の人もいます。障碍をもつという点だけが共通で、経験や能力、判断力、コミュニケーション力は大差があります。だからこそ「べてる」ではありませんがトラブルだらけです。トラブルを回避するためには「誰がやってもこなすことが出来てそれぞれの能力に応じて付加価値を生産できる」手順や方法を編み出す必要があります。その「カイゼン」への意欲がすさまじいのです。しょせん障碍者の作業所だなんて馬鹿にしていたらとんでもないことです。自分も大きな影響を受けました。そこでトヨタに「カイゼン」というプロセスを植え付け、トヨタ式生産方式を作り上げた大野耐一氏や「トヨタ」という会社自体を研究する書物を読んだりしています。

「ジャスト・イン・タイム」納入方式というのを一度は聞いたことがある方は多いでしょう。もちろん「必要な時に必要な分だけの部品を用意する」ことですが、これは自社の生産プロセスのカイゼン無しに、ただ納入する取引先に納期だけ押し付けるようなことをすれば凶器になります。労働組合系の人々をはじめ、中小企業や下請け企業の中にはこれでえらいめにあっていると思っている場合もあるでしょう。しかし、本当のジャスト・イン・タイムとは自社のプロセスのカイゼン活動であり、それがうまくいってから無理なく取引先に社員を送り込み手順を伝えて「カイゼン」を連鎖させ、資源や労働力の無駄遣いを省いていく活動なのでした。それが結果としてコスト削減になるのですが、短絡的な視野でとりくんでもうまくいかないものなのです。協力会社(取引先・下請け企業)の在庫保管のための倉庫がなくなっていくのを大野氏は大変よろこんでいます。自社だけ繁栄すればいいという考えからの「ジャスト・イン・タイム」ならば、下請け会社はいつどんな注文にも応じられるよう倉庫に様々な在庫を抱えておかねばなりません。それでは本質的な「カイゼン」は出来ないし、本質的な無駄やコストも減らすことが出来ないのです。

今でもこうした協力企業はトヨタから教えられた生産方式(これは実践の中にあり、いくら書物を読んで分かった気になっても、現場に取り入れて成果を生み出すのは難しい)によって自社の業績もよくなったことに恩義を感じています。ですから協力会社で作る連合会では今回のリコール問題にも一致協力して対応すると明言しています。お互いの協力関係、信頼関係があるからこその発言だとおもいます。

日本国内の派遣切りにとどまらず、赤字決算による株主へ(今や、世界中の株主の多くは年金基金や保険会社など、社会の多くの人の老後やイザという時のサポートをする公器です)また世界中の工場閉鎖や、リコール問題によるディーラーや協力企業へ、そして何よりトヨタを信頼して商品を買った顧客にたいして迷惑をかけたトヨタですが、そういう失敗を糧にして伸びてきた企業なのでした。そしてそういう企業であっても「調子の良いときにあえて踏みとどまる」判断を下すのが難しいということを、自分は学びました。

自分の勤めていた会社が倒産しかかった頃、取引先は先を争って売り掛け金の回収や納品カットに走りました。支援先企業もなかなか決まりませんでした。いかに信頼されていなかったかの証です。希望退職募集時、自分に本当の商売の仕方や商品知識や基本的な商売に必要な数字の計算法などを教えてくれた、力のあるマネジメント職の方々が真っ先に辞めました。そういう経験があるので、おそらくですがトヨタは今回の失敗を胸に刻み、先を拓くのではないかというような気がしています。

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2010/03/04

八女のみかん

八女のみかん
昨日近所のスーパーでJAふくおか八女のみかんが並んでいて驚きました。これは立花町で作られているものだと思います。逆転発想のみかんです。

関東ではみかんといえば静岡・和歌山などの産地が名高く、福岡のみかんなんて「なんじゃそりゃ?」ってなかんじでしょう。しかもみかんはかなり気候変動の影響を受けやすく、自分が八女農協に勤めた年の数年前には相当の不作で、みかん農家の半数がみかん栽培をあきらめたと聞いています。そんな八女のみかんが関東のスーパーにどうどうとならぶとは・・・。そのための工夫があります。写真のとおり「くらだしみかん」、つまり主産地の出荷がほぼ終わった頃を見計らって出荷しているわけです。しかし、ことしみかんを食べてよくわかりましたが、みかんはとてもかびがはえやすい。だから以前は防カビ剤をつかっていたのですが、消費者の「安全」「安心」を求める傾向が強まり、防カビ剤は使えなくなりました。たからよくかびます。かびがはえるみかんでないと安心して買えないということでもあります。八女のみかんはかびないようにおそらく低温倉庫で保管したのち、よくみるとわかりますが、小さな無数の穴があいた袋に入れて通気をよくすることでかびをふせいで出荷されています。ネームバリューが無い代わりに、生産者の名前付で出荷され、しかも試食まで用意され、その試食のみかんにも生産者の名前が記されているのです。ここまでやっている産地はないだろう・・・。あの農協はほんとうにすごい!

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2010/02/07

中国は民主化が先

数日前基軸通貨が移る可能性について書きました。確かに中国はGDPで今年度中に日本を抜きアジアで最大規模になるだろうとダボス会議で竹中平蔵氏が断言した(TIME誌)そうです。さらに日本のように「もう発展はいいや」という態度ではありません。すべての国民に富が行き渡るようにさらなる発展を求め続けるでしょう。経済の規模からいって、NYLONKONの地位はもう揺るがないでしょう。

しかし、言論の自由が保障されない国の通貨が基軸通貨になるとは考えにくい。通貨とは人々が信頼してものやサービスの対価として受け取ることが前提です。当たり前ですね。言論の自由が保障されず、いつなんどき政府の態度が変わるか分からない通貨をみんなが受け取るかといえばNOですね。まず民主化と言論などの統制からの自由化が絶対に必要です。インドはアメリカと並ぶ世界最大の民主主義国家です。昨年の総選挙でも日本の10倍の人口がいるにもかかわらず投票翌日には結果が判明し、選挙結果をすべての党が受け入れています。選挙プロセスに不正があったと主張する党はありませんでした。中国がそういうレベルに達するのにいったい何年かかるのでしょう。それまでは結果として人民元が基軸通貨になることは無いでしょう。

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2010/02/01

NYLONKON

このタイトル、なんのことだか分かりますか?自分も先週はじめてこの言い方に出会いました。

これはアメリカのニューヨーク・イギリスのロンドン・そして中国の香港を合成した言葉で、意味は世界金融の中核を担う三都市という意味です。

バブル絶頂期、日本円は国際通貨としてはばたく可能性がありました。実際アジアにおける金融センターの役割は、東京が担っていました。しかし日本円はローカル通貨として徐々にその価値を落としつつあります。一方中国の人民元はすでに東南アジア諸国では米ドルよりも通用しやすいというレポートもあります。

日本が不景気であえぐ中、韓国経済は絶好調です。GDP伸び率は日本の10倍の一方、インフレ率は2%台と安定しています。

日本を代表するといわれる企業の凋落ぶりが著しいです。トヨタはプリウスしか売れていないと聞きますが、それは国費を投じて補助金と減税による優遇策を講じているから。トヨタの工場で生産にあたる工員があのプリウスを買えるか、自社の従業員が買えないような値段のものを国費で若干安くして売れているといったってたかが知れているでしょう。日本のほとんどの製造業がこのような事態に陥っています。フォルクスワーゲンと提携してインドをはじめとした新興国(もっともインドはイギリスが来るまで世界貿易の2割を占める大国でした)で売り上げを稼ぐスズキがそのうち日本一の企業になるのではないかという予感がします。トヨタは今のままではアメリカのゼネラルモータースと同じ道を歩むでしょう。プリウスを安くしないのは、せっかくの技術なのだから最初は高く売ってもとをとろうと思っているからだと思います。それは今までなら当然の投資回収の仕方でした。しかし中国もインドもその他のいわゆる新興国も、経済成長のスピードは日本のそれの7倍から10倍以上の速度で進展しています。車を買える人たちがものすごい勢いで増えている、その市場に食い込んでいるところが伸びている。韓国経済が好調なのはその市場にがっちり食い込んでいるからです。

インドのタタモーターが開発した2000ドルカー「ナノ」は、当初その値段でぎりぎり買える層が基本装備で買っていくと思われていました。しかしふたを開ければ、ほとんどの買い手がオプション装備をつけて自分流にカスタマイズしています。先日ソニーの広告で「余分はいらない、十分が欲しい」というキャッチフレーズがありました。しかし、ソニー製品は余計な装備がとても多くてカスタマイズしにくいです。ウオークマンは明白にI podを意識していますが、I podにかなわない。それはソフトウエア(アプリケーション)を囲い込んで、利用者が自由にカスタマイズできないようになっているからでしょう。

TIMEを読んでいると、アジア版であるにもかかわらず日本の記事の少ないことに衝撃を受けます。観光ガイドの記事として沖縄が紹介されたり、コラムで自殺を思いとどまらせる相談役がいるという話題で福井県の東尋坊が取り上げられたりしていました。

世界中がグローバルにつながって様々なうねり(プラスもマイナスもありますが)を起こしているというのに、日本人の関心は少ない国内の利権の奪い合いに終始していて、将来的にもっと成長するというモチベーションがほとんどありません。世界の中で主導的地位を築こうという大局観に基づく動きが全く感じられません。

米ドルが世界の基軸通貨である時代は終わりを告げつつあります。イギリスポンドからアメリカドルに基軸通貨の地位が移るまで30年くらいかかりました。米ドルもそう簡単には基軸通貨としての地位を譲らないでしょうが、徐々にその時代が終わりつつあることは間違いなく、その肩代わりをするのはどうもユーロではなく、最近よく議論される合成通貨でもなく、どうやら中国人民元になりそうです。「NYLONKON」という造語(ネーミング)はその事実を如実に物語ると感じます。

日経新聞で数ヶ月前、日本有数の大企業の会長が「自宅で何がどこにあるか分からず、妻に怒られ、人に怒られるというのはこんなにストレスを感じるものなのだと改めて思い知った」と書いていました。そんなコラムがどうどうと掲載されること自体に幻滅します。日本航空が抱える問題は多かれ少なかれ日本の大企業や役所が抱える問題です。甘い再建策で再破綻が噂される日本航空の姿は、この国そのものの姿を暗示していると思えてなりません。

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2010/01/21

世界のやまちゃん、川口に!

世界のやまちゃん、川口に!
「世界のやまちゃん」と言えば名古屋で有名な居酒屋です。鳥の手羽先を独特のタレで味付けしてあるのが売りで、しかも安くあがります。自分なら2000円で大満足のお店です。この「世界のやまちゃん」が川口に進出しました。場所は東口のコモディイイダ(さらに昔はトポスだったかな)の向かい側です。

最近は居酒屋も低価格でないと繁盛しないそうです。客単価2千円位が一番繁盛するとか。おつまみも280円均一など。自分は大抵飲み負け食べ負けるので、本当にお付き合いでしか飲み屋には行きません。それでも一人2千円代でないと無理です。時代の方が追いついて来たようです。

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2010/01/14

今の為替について

先日ザ・プライスとセブン&アイホールディングスの話題を書いた記事で、輸入先の多くが中国なのに米ドルにだけ円高になっても円高差益は生まれない、イメージだけだと書きましたが訂正します。中国の人民元は政策的に米ドルと連動させているので、米ドルに対してだけ円高でも中国製品の輸入価格が下がる可能性はあります。実際の商談で支払い(決済)通貨を何にするのか、最近の実務に疎いので分からないですが、円高差益の分、安く出来る可能性はあります。

人民元と米ドルの為替が連動しているのは中国政府が多額の為替介入をしている為で、介入の結果生じる外貨準備は2兆ドルを超えるそうです。その外貨準備を日本のように米国債中心に運用するリスクの高さからユーロなどに分散しようとしているものの、金額が大きすぎてままならないようです。それが目下為替の不安定要因になっています。アメリカドルが世界の基軸通貨である時代が終わりつつあることはほとんどの経済評論家の一致意見ですが、それがいつか、は難しい問題です。イギリスポンドの時代からアメリカドルの時代になるのに30年かかっています。世界大戦みたいなことはもうありえないと思いますが、戦争の時代とは違う形での激動の時代を私たちは生きているのだと思います。

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2010/01/13

銀行失格

今週の週刊ダイヤモンドに見出しのような特集が組まれています。電車の中吊り広告には、「企業育成どころか金も貸さない機能不全から抜け出せるのか?」とまで書かれています。この内容は自分が先日グラミン銀行の件で書いた記事と同じ趣旨だと思います。起業家にお金と経営サポートとしての人的資源をを提供し、企業を育て、その対価として金利を受け取るのが銀行という事業の本分でしょう。人々から小口預金を預かり、事業収入から利息を分配するのも大切な役割ですが、それも出来ない。年末の日経ビジネスの特集も「銀行亡国」でした。先週の日経ビジネスの郵政にまつわる特集で亀井大臣も、銀行が貸さないので郵便局に地方の小口融資をさせたらいいという趣旨の発言をしていました。郵便局がグラミン銀行になるというのもアイデアの一つですが、育成能力に欠けるので実際は難しいでしょう。いずれにしても、多くのひとが、この国の銀行のあり方に疑問符をつけています。日本が他の国より景気回復が遅れている大きな原因の一つが、この銀行問題でしょう。

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2009/12/27

銀行の役割

銀行の本来的役割は信用創造と産業殖産です。これは農協の金融だって同じことで、対象が限定されているだけのことです。銀行は小口の預金を集めて、起業家に新しい産業を興すための資金を貸し付け、さらにのばしていくために経営相談に応じ、地域や国の経済を発展させる役割を担ってきました。戦後の高度成長期、今の日本を代表するような企業は、事業を大きくするために長期安定的な貸し付けを必要としましたが、一般の銀行は3年・5年といった長期の融資には応じられなかったので、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、日本興業銀行といった銀行が作られました。これらは預金者や一般銀行に長期債(長銀なら「リッチョー」など)を買ってもらい、その資金を使って長期融資に応じました。日本を代表する企業がまさに国を代表する企業になり大規模になると、これらの企業は自分で社債を発行したりすることができるようになり、長銀のような銀行を必要としなくなりました。困ったのは当の長銀や日債銀です。「役割が終わった」と言われても株式も上場しているし自前の行員もいます。廃業する訳にはいかない。そこで当時「不動産は値下がりしない」と信じられていた中、バブル(今だからそうだと結論できますが)も盛り上がり、不動産や不動産会社(というよりブローカー)に多額の融資をしました。バブル崩壊により不動産の価格は一気に値下がりしました。貸出先が細っていたために特に不動産金融に活路を見出そうとしていた長銀、日債銀が総資産よりも負債の方が会期上(簿記の資産=負債+資本を思い出してください)大きくなる債務超過状態に陥り破綻した訳です。この当時他の銀行も多額の不動産融資があり、また企業も一時的なもうけのために多額のお金を不動産に投資していました。これらの貸し出しがほとんど焦げ付き(回収不能)になりました。債務超過にならずとも自己資本率が極端に低下しました。この当時大手はもとより地方銀行も海外に進出していたので、会計上の自己資本率規制にひっかかりました。資産を圧縮するためにバブルに踊らず実直に経営していた会社からも貸し出しを引き上げました。これが政治問題化した貸し渋り、貸しはがし問題です。先日の政権交代時に大物政治家が「あの時、政府が救済しなければ銀行はすべて倒産していた」と発言して物議をかもしましたが、それは本音であり事実です(大手では当時の東京三菱銀行だけがかろうじて自力経営可能な状態でした)。

現状はどうでしょう。バブル以降地方銀行も含め、銀行は新しい産業を興す力を無くしてしまいました。大きく貸して大きくもうけること、そうでなければ安全性の高い資産に投資することしかできません。新しい産業の目を発見し、そこに資金を貸し付け大きく育てていくためには、足で細かく取引先を掘り起こすことが必要です。その事業の将来性を見極め、経営者の人となりを見極め大胆に決断し、さらに継続的にサポートしていくことが必要です。こんな地味な仕事を高給取りの銀行員はほとんどできません。昔はあったノウハウもバブル期に廃れてしまいました。将来性の審査といったってコンピューターソフトに打ち込んだデータにもとづき機械的に審査するくらいでしょう。なんたって経営者の人となりを見極めるという、地道な経験でしか裏打ちできない能力が欠如しています。

グラミン銀行はバングラディシュから始まった新しい銀行のスタイルです。詳しく書くには本を一冊かくくらいの時間が必要ですが、この銀行は既存の銀行や企業が全く無視していた小さな農村をくまなく網羅し、主としてその地域の女性に極めて小額の貸し付けをしています。女性に貸し付けるのは女性の地位向上のため。女性の地位向上はその子どもたちへの教育の重要さの理解を促進し、やがて無知故の貧困から地域が脱出するきっかけになりえます。最初、貸し付けを受けた地域の女性は牛を買い、その乳や糞(肥料や建材になります)を売り少しずつ最初の資金を返し、やがて独立していきました。今、牛の代わりに携帯電話が村の生活を支えます。携帯電話は、有力者が無視して電話線を引かなかった用なところでも基地局まで電波が届けば使えます。そして携帯電話を通じて村の人たちは生産物の市況を知り、有利な時期に出荷するよう工夫したり、出稼ぎに出かけた家族と連絡をとったり、離れた場所の医師から急病人の処置を聞いて救命活動をしたりしています。バングラディシュから始まったこの革命は今や世界中に広がりつつあります。この活動を最初に始めたムハマド・ユヌス氏はノーベル平和賞を受賞しました。

10年後、このグラミン銀行の融資スタイルが世界中にいわゆる先進国にまで広がってもおかしくないと自分は考えています。田中康夫が長野県知事に就任して地域住民との車座集会をした時、長野県の山里の何人もの村長が「こんなところまで知事がきたのは初めてだ」とこぼしました。田中康夫はパフォーマンスのやり過ぎで長野県から追われてしまいましたが、日本の農村部には県知事すら足を運ばないようなところがあふれんばかりにあるのです。調べたいことがあればインターネットで検索する、そんなことすら難しい限界集落のようなところもたくさんあります。日本国内でグラミン銀行が成立すると考えているのは自分だけではありません。小額の資本が無いために産業が起きない。だから公共事業に頼る。しかしその費用は借金。自治体の中で実は夕張市以外にも破綻が懸念されているところはすごい数になります。しかし、多くは本当の借金を様々な帳簿上のやりくりでしのいでいるのが実態です。先日書いた旧岩槻市の第三セクター問題がクローズアップされているのは、まさに帳簿上のやりくりができないようなルールができてさいたま市が抜本的に処理せざるを得なくなったからです。

国の保護に安穏として本来の役割も担えない既存の銀行。日経ビジネスに「銀行亡国」などと書かれても、もはや本来の役割を担う能力を取り戻すことはできまい。今の不況は一時的なものではありません。新しい産業を興し、新しい需要を喚起していかなければ、このまま日本は沈没するでしょう。

追記:政府が銀行を救済しなければならないのは、銀行が送金システムや企業間の決済システムをいわば人質にとっているからです。給料を銀行から引き出さなくても、手形を銀行に預けなくても良くなれば、あとは銀行は信用創造や殖産興業で利益を稼ぎださなければならず、それは銀行間の収益力を大きく左右するでしょう。そして送金システムや決済システムと無関係であれば、政府が救済しなくてもお金の目詰まりは起きないのでだめな銀行は他の企業と同様に倒産しても問題なくなります。2年前の日記を読み返したら、今書いたようなことが既に書いてありました。我ながらびっくり。長銀や日債銀が過去に担った役割とその破綻の経緯も3年くらい前から「いつかブログ記事にしておきたい」と思っていた話題でした。

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2009/12/24

会計基準がいちいち話題になる訳

知人が書いて送ってきたメールに「日本を代表する製造業(ソニーのことだと推測します)でさえ、本業のもの作りで稼いでいない。もうかっているのは金融(ソニー銀行、ソニー生命、ソニー損保その他と推測します)だけ」との話題があって、ふと日経ビジネスの過去記事を引っ張りだしてきました。ソニーどころではありません。国中が虚業で成り立っていると言っていい事実があります。

多分本年8月24日号の日経ビジネスだと思います。岩手県のある農家、実直に経営していて借りた資金の返済が滞ったこともありません。ところが農協から「農業から手を引いて設備を売却し、資金を全額返済するよう」迫られたのです。いわゆる貸しはがしです。なんでこんなことが起きたと思いますか?

農協(JA)は本来農家が組合員になった生協のようなものです。農業の振興のためにあるのです。しかしながら最近は「振興」ではなく「衰退」を促進しているふしがあります。全国の組合員が943万人います。そこから集めた貯金を本来は別の組合員に貸し付けて新しい設備を導入したり、飼っている牛を増やしたり農地を増やしたり(戦前のような小作農が生まれないよう、農地の売買には時代遅れの規制がかかっているため、多くは貸し借りをしています。簡単に農家同士で農地の売買ができないので公共事業用地として行政に買ってもらうのがいまや一番利益を生むことも問題ですが、ここではひとまずおいておきます)する資金として貸し付けるべきです。あるいは福岡八女農協のように、減反のため減らした田んぼを農家が大豆畑にして、農協がその大豆の加工施設をつくっている場合もあります。マルエツ川口駅前店ではふくれん(福岡県農協連合会)の豆乳が売られているほどです。しかし福岡八女農協は以前から紹介しているように、農協としては実にいろいろな取り組みをしている優秀な方の農協です。それでも非効率な部分はたくさんあるのですが・・・。だからその他の農協は推して知るべしと言った状況です。農業に貸し付けてもお金にならないので、上部団体の都道府県信連に預けています。全国737農協からの預かり金は49兆円にのぼります。この都道府県信連も自前貸し付けができず、さらに上部団体の農林中金に28兆円も預けています。これらの預金利息や配当で各農協は経営を維持している状況です。このほかJA共済のようなものでも稼いでいます。

昨年のリーマンショックで農林中金は投資していた株券や債券多額の損失を出しました。事業の元出金のことを簿記用語で資本といいます。国際市場で取引する金融機関は自己資本比率が8%以上あることが国際ルールとなっています。ごく簡単に言えば資本金以外は借金(農林中金の場合は下部組織からの預かり金もありますが、これも請求があれば返さなければならないお金ですから借金と考えてみましょう)です。簿記の基本は「資産=負債(借金)+資本」です。投資株券や債券で損が出ても借金は減らないわけですから損失は資本の減少を意味します。すると国際ルールである自己資本比率8%が維持できなくなります。そこで貸し付け(これも資産です)を減らして資産を減らすのです。そして借金を日銀などに返します。資産を減らせば、自己資本額が減っても自己資本比率は維持できます。こうやって回り回って個別農協も貸し付けの回収に動いた訳です。農協が自分自身を守るために組合員を犠牲にし、本来の役割である農業振興も放棄しているのです。

民主党が前回の総戦挙で「農家の個別所得保証制度」を打ち出したのは、本来の役割を担えない農協を介さず、農家を国が支えるという意思表示です。小沢一郎氏の持論とも聞きます。自民党時代は農協を通じて米の買い入れ価格を政府が操作することで、間接的に農家の所得保証をしてきたのですが、それが機能していないということです。

このような問題が国中を覆っています。しかし、もの作りなら製品や原材料などが資産となりますが、金融機関の場合は貸付金や実態のない債券や株券やその他の証券が資産となります。こうした実体のないものを資産とすると、会計上のルールいかんでその価値が変わります。貸付金ならばその額に対して最低5%は貸し倒れ引当金を(負債に)積むなどというルールがあります。このパーセンテージが変わるだけで利益の額や資本額は変化します。一般企業でもそういう部分はあるのですが(例えば代金の未収金にも引当金を積むルールがあります。詳しくは簿記を勉強してください)金融機関の場合はそれが顕著なのです。自己資本8%なんて、自分のお金8万円で100万円のお金を動かしている訳ですから、最近流行のFX取引なんかと同様投機に近いです。しかも銀行(や農林中金のような金融機関)が倒れると誰も信用してお金を貸さなくなるので、経済が目詰まりしてしまうので国は金融機関を救済せざるを得ません。救済しなかった結果おこったのがリーマンショックです。投機資金が世界中を巡り、バブルを引き起こしたり、金融危機を引きおこしたりするので、それを防ぐために世界中の政府機関などが会計基準の統一や透明化をはかろうと苦慮しています。それでもばくちをしかけて大もうけできれば自分のものになり、失敗したら政府が救済することがはっきりしている以上、金融はもうかる訳ですね。

このように虚業が隆盛して工業にも農業にもお金が回らない。最新号(先週号?)の日経ビジネスの特集は「銀行亡国」だそうです。


この記事分かりにくいですよね。せめて簿記の基礎中の基礎「資産=負債+資本」という知識があるとこの手の話題はかなり分かるんですが・・・。

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2009/11/26

ブラックフライデー

明日、アメリカはブラックフライデイ(Black Friday)という日なのだそうです。なんのことだと思いますか?クリスマス商戦の初日のことなのです。今週号のTIME誌にその話題が載っていたのと、今週の本郷教会での英会話授業の中で話題に出たので一気に覚えてしまいました。

日本では連休にかけて川口そごうが5日間連続ミレニアムカード会員優待セールをしたのをはじめとして、今年の12月は厳しい歳末商戦になると見込んでセールを前倒しでしています。しかしアメリカでは事情が違うのだそうです。今日11月26日はサンクスギビングデイという祝日です。この日は手持ちの辞書によると「1620年Mayflower号で英国からやってきた初期の移住者が最初の収穫を神に感謝することからはじまった」そうで、この日まではクリスマスセールではないらしいです。人々も消費を控えるようです。だからこそ、明日からはTIME誌いわく、ばかげたようなほどの買い物シーズンになるのだそうです。

アメリカのクリスマス商戦の売れ行きは世界中の経済に影響を与えます。なにしろこの時期のアメリカ人の買い物意欲はすごいのです。世界中からあらゆるものを買いまくるといってもいいくらい。だから日本でもニュースになる訳ですね。

しかしリーマンショック以降、様々な雑誌や本が警告してきたように、アメリカは人(クレジット)も国(国債)も借金して買い物をするのが難しくなりつつあります。アメリカドルが今日一時的にですが1ドル86円になりましたね。アメリカドルと米国債に対して人も国も疑心暗鬼になりつつあります。一ヶ月後、為替や株価はいったいどうなっているでしょう。新聞をとるのをやめても気になって仕方のない話題です。

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