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2017/03/27

まわりまわって

最近、以前にもまして救急車の搬送で受け入れ先の病院が決まるまでに時間のかかるケースが増えているようです。

昔このブログで救急搬送の話を書いたときは、産科が特に危機という話だった記憶があります。しかしありとあらゆる診療科でこうしたことが起きているようです。埼玉県川越市と東京都足立区には救急車を断らないための診療所(入院のベットは少ないが救急対応できる設備は備えている)ができているのですが、そういうところは極めて少ないそうです。

理由の一つは軽症で救急車を呼ぶ人が増えていること。これはしかし裏返せば気軽にかかれるお医者さん(かかりつけ医)がないことも一因でしょう。街中でかかりつけ医を持っている人は自分みたいに慢性の疾患を持っている人に限られます。なまじ健康だと医者にかかる機会がありません。何か体調に問題が発生した場合、どの科のどの病院医院にかかればいいのかわからず、とりあえず救急車を呼んでしまうのです。

先ほど書いた川越と足立の診療所は軽症でも受けるようにしているらしいです。なぜならそうしないと救急車があかず次の患者のところに行けないから。これは志の極めて高いお医者さんでないとできないことで、一般的にならないと思います。24時間対応で大変なだけでなく、設備を整えるのに大きな借金をかかえてでもやっているからです。

もう一つはトラブルを避けようとする病院が増えていること。代表的なのは認知症の高齢者が別の急性症状を発症した場合です。診療中のトラブルももちろん、急性症状が治まっても退院や転院が難しくなることがあるからです。今の病院はそれぞれ役割が決められていて、高度な救命処置や難易度の高い患者を受け入れる病院では何週間も入院し続けることはできないしくみになっています。急性期を過ぎた患者を受け入れ続けると診療報酬が下がるので、それが続くと病院が赤字になって、最悪の場合存続不可能になるからです。

診療中のトラブルも、訴訟になれば億単位の賠償請求もざらで、病院も医師個人もリスクを負いきれないのだと思います。こうした訴訟に対応する保険も保険会社から発売されているほどです。


力の限り良い医療を提供しようとする医師や病院は、率直なところ患者を選んでいるのが実態だと思います。腕の良い医師の中には、よい評判が立ちすぎるとすぐに患者が殺到するため「ほかの人には言わないように」と患者に口止めしているケースもあるくらいです。

さて患者というか客を選ぶ例は最近医療機関だけでなくなりました。引っ越しやさんの中には、今の時期の引っ越しピークに仕事を断るケースも出て話題になっていますし、先日書きましたが宅配も荷物の多さに加えて再配達が多すぎて一部時間の時間指定配達を停止したほか、荷主に値上げの交渉もするとか。

流通業や飲食業もそうです。

もともと高級店は「一見さんお断り」ということもありましたが、スーパーなどは赤字による人員削減に加えて、そもそも深刻な人材難でとても要望に応えきれない事情があると思います。売り場に店員がいないから常時人のいるレジに問い合わせからクレームまでなんでも集中する傾向があり、そのレジ担当は店の人ではなく派遣社員で、通り一遍の対応しかできず。店長といっても予算管理とパートさんのシフト管理以上のことはできないとか。だからトラブルになりそうなお客さんを特定してマークるようなことはあると思います。

医療機関に対してもそうですが、何のためにそういうクレームをつけるのか理解に苦しむケースが増えています。

「わたしは客なんだから大切に扱え」という態度では、医者にも店にも嫌がられます。人間関係だってそうじゃありませんか。コーヒー100円の店でぞんざいに扱われても、それはその値段なりの給料で店の人が働かされているから。500円のコーヒーの店ならもう少しいうことも聞いてくれます。

あとは10年くらい前に福井県の村のお医者さんの話を書いたことがありますが、命にかかわるような疾患の見逃しがあっても、「人間だから間違うこともある」と村の人が許してくれて、医師のほうも一層腕を上げて信頼にこたえるようになったとか。


まずは「してくれてありがとう」という気持ちがあって、そのうえで相手の暮らしの成り立つ分の対価も払うというのがお互いにとっての良い関係では。「ありがとう」もなく「客だから」「金を払っているから」という態度で人に接する人が増えれば増えるほど、間接的にせよ働く自分の首を真綿で締め上げることになるのだと思います。

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