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2010/03/07

一種の最先端治療

2日にも書きましたが、自分が今取り組んでいるのは自己研究です。自分自身を研究対象として、ワークシートに自分自身の状態を記入していきます。これは自分が通っているデイケアで昨年から取り組み始め、いまやほとんどの人がこのワークシートに自分自身の状態を記入し、それをもとに診察が行われています。記入するワークシートはデイケアで精神保健福祉士の資格も持つ看護師さんたちが作っています。目標を短期、中期、長期に分けて記入し、長期目標は生きること、日々の生活をこなしていくためのモチベーションとなります。そしてそれを実現させるためには現実的にどうしなければならないかを中期目標に、その中期目標をこなすため週~月単位で達成できる目標を短期目標として設定しています。薬はきちんと飲んだか、食事はきちんととったか、間食はしていないかなどを○×で記入したり、気分の度合い(ゆううつか気分良いか)を10段階で記入したりしている人もいます。言葉で書くことのできる人は言葉で調子を書き込んだりもしています。自分は他の人のものを参考に自分でアレンジしたものを使っています。毎週この形式を変化させていますが、シートを使って診察を受けることはもちろん同じです。

自分自身もそうなのですが、このシートを書くことで、多くの人が気分の上がり下がりや疲れの因果関係を自分でつかめて納得できるようになってきたのです。自分も疲れて思い通りにおきられない時、疲れの発作が出るとき、不安になる時、いつも「データ」を振り返り、自分で対処法を見つけています。そういうことができるようになりました。他の人も程度は様々ですが同様で、5年、10年とデイケアに通所しているばかりだった人たちが、作業所に出かけたり、自分のように就労支援センターを利用して就労を考えるまでになりました。そうやって自分のコントロールが自分で出来るようになって来た人たちは積極的に飲む薬を減らしています。もちろん医師との相談で決まることですが、医師も減らしてかまわない薬はどんどん減らしています。

これは「べてるの家」で「当事者研究」として行われていることとかなり似ています。ただし「べてる」では複数の人でサポートしあいながら自己研究を「言葉」におきかえていきます。だから当事者研究の本(医学書院)まで作れるようになりました。自分の通っている病院のデイケアはそれとは違い、個人の特徴に応じて表形式のワークシートにして、グラフのように一目瞭然にする、それをスタッフや主治医と検証しながら次のステップへすすむというところがちがいます。図や数字やグラフが多用されています。

現代社会はゴールの無い、常に知識能力をブラッシュアップしていかないとならない社会ですが、限度があります。すきま時間の使い方なんて本まであるけれど、普通の人がすきま時間まで何かしていたらすき間がすき間でなくなり、集中しなければならない時間まで散漫になるはずです。自分の器を自分で認識して「出来そうだけれどもあえてやらない」という判断を下さないとならないのです。「あえてやらない」ことがいかに難しいかは「とても難しい『できるけれどあえてやらない』」にも書きました。とくに自分のような人間は抱えすぎの傾向があります。この1~2年いかに「抱えない」ことをがんばったか!

ワークシートを使って自己研究することで、寂しさの原因も分かる、疲れの原因も分かる、つい食べてしまう原因(自分は間食しませんが、そういう人も多い)、つい飲んでしまう原因も分かる。自分で手を動かして毎日書くことで、自分自身で原因がつかめる、納得できるのは実に大きな効果があります。

所詮坑うつ薬が進歩しようと、風邪薬と同じように対処療法にしかなりません。(でも薬を飲むことは、症状を安定させるためには大事です。飲みすぎもいけませんが、適切な処方量の薬を飲むことは大事だと自分は考えます。サプリメントのほうが毒性が少ないという意見がありますが、本質的にはサプリメントも対処療法という意味で変わらないのです)。自分を知ること。そこからが本当の回復です。しかしこれには主治医やスタッフの側に時間と忍耐が必要です。「調子はどうですか?」だけ聞いて、薬を処方するだけの方が今の仕組みでは楽チンだし利益もあがります。「人材を社会へ還元するのが精神医療の役割でなければならない」、とデイケアの主任看護師さんは言っています。これは誰にでも言えるせりふではない。やはり自分は色々な意味で恵まれています。

このワークシートを使った自己認識法は、そのうち学会で報告されるそうです。ある意味最先端の精神科治療なのです。

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