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2009/12/24

会計基準がいちいち話題になる訳

知人が書いて送ってきたメールに「日本を代表する製造業(ソニーのことだと推測します)でさえ、本業のもの作りで稼いでいない。もうかっているのは金融(ソニー銀行、ソニー生命、ソニー損保その他と推測します)だけ」との話題があって、ふと日経ビジネスの過去記事を引っ張りだしてきました。ソニーどころではありません。国中が虚業で成り立っていると言っていい事実があります。

多分本年8月24日号の日経ビジネスだと思います。岩手県のある農家、実直に経営していて借りた資金の返済が滞ったこともありません。ところが農協から「農業から手を引いて設備を売却し、資金を全額返済するよう」迫られたのです。いわゆる貸しはがしです。なんでこんなことが起きたと思いますか?

農協(JA)は本来農家が組合員になった生協のようなものです。農業の振興のためにあるのです。しかしながら最近は「振興」ではなく「衰退」を促進しているふしがあります。全国の組合員が943万人います。そこから集めた貯金を本来は別の組合員に貸し付けて新しい設備を導入したり、飼っている牛を増やしたり農地を増やしたり(戦前のような小作農が生まれないよう、農地の売買には時代遅れの規制がかかっているため、多くは貸し借りをしています。簡単に農家同士で農地の売買ができないので公共事業用地として行政に買ってもらうのがいまや一番利益を生むことも問題ですが、ここではひとまずおいておきます)する資金として貸し付けるべきです。あるいは福岡八女農協のように、減反のため減らした田んぼを農家が大豆畑にして、農協がその大豆の加工施設をつくっている場合もあります。マルエツ川口駅前店ではふくれん(福岡県農協連合会)の豆乳が売られているほどです。しかし福岡八女農協は以前から紹介しているように、農協としては実にいろいろな取り組みをしている優秀な方の農協です。それでも非効率な部分はたくさんあるのですが・・・。だからその他の農協は推して知るべしと言った状況です。農業に貸し付けてもお金にならないので、上部団体の都道府県信連に預けています。全国737農協からの預かり金は49兆円にのぼります。この都道府県信連も自前貸し付けができず、さらに上部団体の農林中金に28兆円も預けています。これらの預金利息や配当で各農協は経営を維持している状況です。このほかJA共済のようなものでも稼いでいます。

昨年のリーマンショックで農林中金は投資していた株券や債券多額の損失を出しました。事業の元出金のことを簿記用語で資本といいます。国際市場で取引する金融機関は自己資本比率が8%以上あることが国際ルールとなっています。ごく簡単に言えば資本金以外は借金(農林中金の場合は下部組織からの預かり金もありますが、これも請求があれば返さなければならないお金ですから借金と考えてみましょう)です。簿記の基本は「資産=負債(借金)+資本」です。投資株券や債券で損が出ても借金は減らないわけですから損失は資本の減少を意味します。すると国際ルールである自己資本比率8%が維持できなくなります。そこで貸し付け(これも資産です)を減らして資産を減らすのです。そして借金を日銀などに返します。資産を減らせば、自己資本額が減っても自己資本比率は維持できます。こうやって回り回って個別農協も貸し付けの回収に動いた訳です。農協が自分自身を守るために組合員を犠牲にし、本来の役割である農業振興も放棄しているのです。

民主党が前回の総戦挙で「農家の個別所得保証制度」を打ち出したのは、本来の役割を担えない農協を介さず、農家を国が支えるという意思表示です。小沢一郎氏の持論とも聞きます。自民党時代は農協を通じて米の買い入れ価格を政府が操作することで、間接的に農家の所得保証をしてきたのですが、それが機能していないということです。

このような問題が国中を覆っています。しかし、もの作りなら製品や原材料などが資産となりますが、金融機関の場合は貸付金や実態のない債券や株券やその他の証券が資産となります。こうした実体のないものを資産とすると、会計上のルールいかんでその価値が変わります。貸付金ならばその額に対して最低5%は貸し倒れ引当金を(負債に)積むなどというルールがあります。このパーセンテージが変わるだけで利益の額や資本額は変化します。一般企業でもそういう部分はあるのですが(例えば代金の未収金にも引当金を積むルールがあります。詳しくは簿記を勉強してください)金融機関の場合はそれが顕著なのです。自己資本8%なんて、自分のお金8万円で100万円のお金を動かしている訳ですから、最近流行のFX取引なんかと同様投機に近いです。しかも銀行(や農林中金のような金融機関)が倒れると誰も信用してお金を貸さなくなるので、経済が目詰まりしてしまうので国は金融機関を救済せざるを得ません。救済しなかった結果おこったのがリーマンショックです。投機資金が世界中を巡り、バブルを引き起こしたり、金融危機を引きおこしたりするので、それを防ぐために世界中の政府機関などが会計基準の統一や透明化をはかろうと苦慮しています。それでもばくちをしかけて大もうけできれば自分のものになり、失敗したら政府が救済することがはっきりしている以上、金融はもうかる訳ですね。

このように虚業が隆盛して工業にも農業にもお金が回らない。最新号(先週号?)の日経ビジネスの特集は「銀行亡国」だそうです。


この記事分かりにくいですよね。せめて簿記の基礎中の基礎「資産=負債+資本」という知識があるとこの手の話題はかなり分かるんですが・・・。

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コメント

なるほど、農家にもそんな影響が。

実体のある生産活動と結合しない金融商品、概念の産物たる権利を取引することのはかなさが改めて実感できました。

しかも、健全度を測るべき会計基準も恣意的なものなんですよね。しかも、博打に失敗しても、、、

やはり、大地に足を付けて生きている人(企業)の方が安心できます。でも企業は営利社団法人ですから、空を飛んででも儲けを狙うのが使命ですし。難しいですね。農協は本質的な存在意義からして一般企業では無いですが・・・


いつも勉強になる記事をありがとうございます。私が的外れな感想を言ってたら左から右へやっていただけたらたすかります(笑)

寒風吹き荒れる季節ですがお体ご自愛下さい。

投稿: March | 2009/12/25 15:50

○marchさん、いつもコメントありがとうございます。またお気遣いもありがとうございます。

企業が収益を上げるのを自分はあまり否定するつもりはないのです。社会主義国家では党の幹部にコネがあるかどうかですべての人生が決まります。資本主義国家の場合、確率は極めて小さいですが下克上の可能性もなくはありません。ただ収益を上げたら相応の税金を払うことと社会貢献に尽くすことが使命だと思います。銀行の話題を書きましたが、国が救済したのに赤字を理由に長らく法人税を払わなかったのは論外だと思います。

街の商店街で長らくやっている豆腐屋さんが大豆の国際市況に翻弄されたり、風呂屋さんが重油の国際市況に翻弄されたりする時代になりました。これは良い悪いで論じる問題ではない。イギリスの産業革命が工業という新しい産業を生み出したのと同じような過渡期にあるだけのことで、もう数十年たつとこの時代の歴史的評価が定まると思います。それは世界大戦時とは違う意味での「激動の時代」と評されることになる気がします。

年も押し詰まりましたね。良いお年をお迎えください。

投稿: なんちゃん | 2009/12/28 14:04

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