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2009/03/22

ガイドに載っていない香港と中国をかじる

今日3時間かけて読み終わったのは「転がる香港に苔は生えない」と言う本(文春文庫 2006年10月)です。これは文庫本にして990円という値段が示すようにかなりの長編です。著者は星野博美さんで、2000年4月に単行本として出版されたとき大宅壮一ノンフィクション賞をとっています。自分は2月から「愚か者中国を行く」(光文社新書(2008年5月)と「転がる香港~」を続けざまに読みました。すごく面白かったと同時に考えさせられました。「愚か者~」は著者が大学時代に留学した香港を基点に中国大陸を友人とともに列車で旅をしたときの記録。ほんの20年くらい前の、でも今では味わえないような中国を知ることができます。そして「転がる香港~」は香港が中国へ返還される前後の2年を著者が過ごす体験記。

インドでの体験とだぶらせながら読みました。多くのアジアの国で経済発展とともに同じようなことがおきているのかもしれないと思いました。ただ「中国」と言う大国にして表面上は社会主義の国ならではの人々の生き様を感じさせられました。日本に住んでいると「安心」できる生活こそが一番だと考えがちですが、「安心」と言う言葉は少なくとも香港にはない。中国大陸から様々な理由で移住してきた人たち、その人たちは今の自分たちを肯定することなく常によりよい地位を求めて動き続けるのです。主張し続けることでもある、日本人には生きづらいところだろうと思いました。でも自分の今の生きづらさを考えてみれば、動き続けることでなんとか病気でも食っていける人生を模索する自分と、政府をまったく信頼できず動き続けながら将来を自ら作っていこうとする香港の人たちはちょっとだけ似ているかもとおもいました。あとは「社会主義」「結果平等」ということがどういうことかも思い知りました。

いや、思い知ったというには書物の上の体験は穏やか過ぎます。ほんのさわりをかじっただけ。でもその衝撃は強かったです。インドを知っているがために推測できる事情もあります。インドも事実上の社会主義体制を放棄してから経済発展がものすごい速度で進んでいます。インドでも「安心」というのはないのではないか。「安心」というのは「他人任せにしても安全」ということではないですか?他人任せにするという発想がいかにも日本的なのではないか・・・その「安心」は異質なものを排除することで成り立つ・・・だから日本はインドのニラージュ曰く「アメリカやイギリスよりも、世界一ビザの取りにくい国」として入国管理が極めて厳格なのでしょう。ただ、入国に関してはことこれほど難しいのに、出国に関しては「国民の生命財産を守る」というにはあまりにもお粗末な対応しかできていないので、これは以前読んだ「金色のゆりかご」(佐川光晴著 光文社 2008年6月)を読むと分かります。

自分は観光地に最近あまり興味がありません。地元の人の生活、文化を体験しそこから自分の生きる指針を得ることに興味があって、だから昨年夏の国内旅行でもいったい何人の人と会ってきたことか。ガイドブックでも「地球の歩き方」のほんとうに「歩き方」、つまり習慣の違いや食べ物、水、その他気をつけなければならないこと様々に興味があります。

社会福祉政策に決定的なミスがあり、そこからこぼれ落ちている(それでもずいぶんと自分はましな生活をさせてもらっていますが)自分にとって、普通に過ごしていては見えない、同じようにこぼれ落ちている多くの人たちの生活が否が応でも見えてしまう。だから自分の将来を他人に委ねるにはまだ早いように思えるのです。

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