のり子は、今 2008
「のり子は、今」と聞いて、あれ?と思う人は多いはず。自分と同世代かその上なら聞いたことありますね。
「典子は、今」という映画が上映されたのは今から27年前。サリドマイド薬害で両腕がないまま生まれた辻典子さんの実話をもとに、当の本人が主演して世に出された映画でした。
昭和37年サリドマイド被害児として生まれた典子には両腕がなかった。しかし、典子の母は泣く事をやめて我が子を「普通の子」として育てることを決意。足を使って字を書き料理もこなす明るい少女。母の愛と周囲の人間の優しさに触れて典子は何にでもチャレンジする女性へと成長していく。そして、典子は就職したのを機に広島への一人旅を決意する
映画はこのようなストーリーになっています。このストーリーの記載は「BE・LOVE」というコミックの3月25日号増刊から抜き出しました(発行元は講談社)。
このBE・LOVE増刊号を買ったのは3月1日日経夕刊に「過労自殺の父と同じ小児科医へ 娘の歩み漫画に」という見出しで、千葉智子さんという医師の実話が漫画になっているという記事でした。小児科医の不足、医師の自殺といった話題にはとても興味があったので発売された3月はじめに赤羽駅の本屋さんで買い求めて読みました。その、同じ号にでているのが「のりこは、今 2008」という漫画です。このコミック本は女性向けなのですが他にも歌手であり精神科医でもある海原純子さんの生き様を綴ったものや、広島県上下町(現在は府中市の一部)にあるMGユースホステルの誕生からいままでの秘話など興味深い話がいくつも採録されています。オール実話、オール新作、オール読みきりというのがこのコミックの売りなのです。ついでに買った別の号では、阪神淡路大震災に遭遇し、人生を大きく変えながらもトップスターへの道をひたすら歩んできた藤原紀香さんの話が載っていました。
前振りが長くなりました。辻典子さんは2008年の今、ご結婚されて白井のり子さんになり、お子さんが二人いらっしゃいます。一人目の娘さんが生まれたときも足でてきぱきとオムツを取り替えたり料理をしたりしたそうです。典子さんのお母さんは典子さんの子育てに不安があったみたいですが、実際は旦那さんが「自分より手際(足際?)がいい」とおどろくほど。娘さんが11歳の時に第2子を出産、その男の子も今は小学校4年生だそうです。
そののり子さんが一番嫌だったのが、「障害がありながら過ごす典子さんを見習いたいです」「いつもあかるく素敵ですね」「尊敬しています」などと未だにやってくる励ましなどの手紙と講演依頼でした。みな映画の中の『典子』さんを期待しているように思えて仕方なかったのです。しかし実際ののり子さんはそんなに立派な人でもないし、期待にはこたえられないという思いでいっぱいでした。
買い物にでかけて袋を肩とあごではさんで帰ろうものなら、「ちょっとアレ、大丈夫なのかしら」「荷物落ちそうじゃない」、そして「かわいそうだねぇ」と周囲の人々から声をかけられる始末。しかしのり子さんはちっとも不幸だなんて思っていないのでした。
この気持ち、実によく分かります。自分も事情を知っている人、特に以前勤めていた会社の人から「かわいそう」と言われるときがあります。いや父親が「一番盛りの30代を棒に振らせてしまって・・・」などという始末。しかし自分ものり子さん同様「ちーーーっとも」不幸だなどとは思っていないのでした。五体満足で病気でもないけれど自分より大変な生活をしている人は大勢いるはずです。
ところが他人のお世話、息子さんがのり子さんの過去・・・つまり映画に出演したことがあり有名人である事を知ってしまいます。そして「なんでかくしていたの?」と息子さんに問われて言葉を失います。のり子さんには別に隠すつもりなどなかったのですが、今の平凡な幸せを大切にしたいが為にあえて触れなかったことだったのです。
息子さんの問いかけをきっかけにのり子さんは講演会の依頼を受けることにしました。障害者であるわたしだからこそできることがある。それは期待にこたえず、あえて弱さをみせることでした。「障害を持っているのにがんばっていてえらい」という世間の見方に対して「わたしも普通の人です」と訴える事でした。そしてあちらこちらの講演を引き受けてとうとう地元で開く講演会に息子さんが来る事に。そこでのり子さんが伝えた事は・・・。
とても共感しましたし、考えさせられる事もありました。のり子さんは両腕がないので見た目に障害者と分かります。しかし自分は見た目に異常がなく、ほとんど調子のいいときにしか外部へ出て行きません。だから「見た目に分からないだけに大変だよね」とよく言われていました。しかし見た目に障害があると分かるかどうかが大変なのではないとを、この漫画を読んで悟りました。本当に大変なのは障害があろうとなかろうと普通の人であり普通に接してくれればいいと伝えることなのです。「普通に接する」のが実は大変なのですが、人間だから性格と同じでやり取りする間に傾向と対策が出来てくる。障害は個性のひとつでしかありません。そのことを人の輪の中に出て行って理解してもらう事が意義深いことなのだと思います。最近はヒッポのファミリーの人たちが慣れてきたので、しんどくても行きたい気持ちのあるときはファミリーに行きます。少しつらくなって話の輪から外れて横になったり椅子に座ったりする時もあります。それでも「どうしたの?」「大丈夫?」とは聞かれなくなりました。これはかるた(ブログ記事を編集してコピーして配れるようにしたもの)を100人以上に配ってきて、話も聞いてもらいブログも読んでもらった結果です。少なくともわざわざ出かけている日には、少々しんどくなっても30分も放置しておけば何事もなかったようにけろっともとの輪に戻る事をみんな知っているのです。
改めて映画を見てみたいと思い、ご本人の講演も聞いてみたいと思った「のり子は、今 2008」でした。
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コメント
見ているだけで楽しくなります。行った気分で満喫!また、遊びに来ます!
投稿: うつ病 | 2009/02/17 14:39
うつ病さん
貼られていたリンクを拝見しましたが不適当と判断し削除させていただきました。ご了承ください。
投稿: なんちゃん | 2009/02/20 23:48