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2006/08/21

お産を考えるその1

先日自分のいとこの奥さんがお産をするのに遠くまで行かなければならない話を書きました。そちらに「よ」さんがコメントを下さったのですが、自分にはない視点で色々考えさせられたので、コメントを本文に載せたいと打診したところ、「それでは」ということでコメントにはかけなかった分まで書き足して寄稿してくださいました。たまたま自分もお産にまつわるネタを2つほど持っているのでまとめてアップしようと作業したのですが、ちょっとエネルギーが足らず、このままだとタイミングを逸すると考えました。そこで寄稿していただいた分を「その1」ということで載せたいと思います。カテゴリーも「医療」で良いのか迷いましたが、先々見つけやすいという点で考えて「医療一般」ということにしました。ではどうぞ。


先日なんちゃんさんの本文「浜松でのお産」で紹介されたとおり、近年日本では産科医の不足から、お産を扱う施設の減少があいついでおり、日本全国すべての産婦さんにが安心してお産にのぞむことができない状況にあります。

なぜ産科医が不足しているかとのことですが、産科の業務が過酷ということです。すべての医療部門の中でも訴訟が一番多い部門であるということ、自然分娩は昼夜を選ばず、季節を選ばないということ。医師の当直は看護婦と違い、その日普通に診療し、夜当直、次の日も普通に診療というふうに、ずーっと働き詰めであること。

そのため、大学の研修コースを終了した医師が産婦人科を選ばないことや、大学の産婦人科教室で大学院のコースを終えた医師たちが、開業した時、オフィスビルディングで婦人科外来のみの開業スタイルをとることが多くなってきました。

私は北海道に住んでいますが、北海道は過疎の町が多いです。そのような小さい町の病院からどんどん産科がなくなっていってます。
それだけならまだしも、札幌や千歳といった都市の大きな総合病院のなかの産科部門もなくなる、ということまでここ2.3年は起こっています。

先日北海道ローカルの情報番組でちょうど「産科がなくなる!」という特集をやっていました。都市部をちょっと離れるとお産をする施設がなくて病院まで2時間以上かけて通っている妊婦さんたちがいっぱいいます。当然陣痛が始まってからも同じ時間の通院時間がかかるわけですから、不安ですよね。お産は回数が多くなればなるほど、お産にかかる時間も短くなってきます。なので、3人目・4人目のお産では2時間の道のりを病院へ向かう間に車内でお産になるケースは当然考えられます。TVの特集では「3人目子供がほしいけど、生む場所がないので諦めます。」というような人が結構居ました。少子化社会といっていろいろ政策を上げられているようですが、産みたいのに産めない現状を何とかしなければ、どうしようもないですよね。

では、解決策は何なんでしょう。産科医が多くなればそれが一番ですが、医師は養成するまでに6年その後の研修に2年と最低8年間の期間がかかります。色々な現状からいっても、これからの社会ですすんで産科医になりたいと思う人は急に増えるとは考えにくいです。

一般の方はご存知かどうかわかりませんが、助産師は開業権を持っています。つまり独立して開業し、お産を取り扱うことができるのです。
もっとたくさんの助産師が独立開業して、自宅分娩が増えれば、お産する場所がなくて子供を諦めるといったことがなくなりますし、医師を養成するよりも早く問題が解決します。
日本助産師会は助産師の独立開業に向けての研修コースやサポートを含めて、近年の少子化問題に取り組んできました。
しかしながら、病院勤務の助産師が独立開業するケースはそんなに増えてきません。

理由のひとつは、近代日本において「施設分娩」が定着しており、自宅での分娩や医師の立ち会わない分娩が著しく少ないこと。
もうひとつが、産科医が協力的でないこと、法律的に厳しいことです。


最近少子化が進むにつれ産婦さんたちも一生に1度か2度しかないお産を有意義にと考え、「お産」がイベント化しつつあります。そんな中で、「ロハス」ブームにも乗り今また「自然分娩」が見直されつつあり、開業助産師の活躍にもフォーカスがあてられてきています。人気漫画家の桜沢エリカさんの作品「贅沢なお産」がドラマ化され、その中でも自宅分娩が大きく取り上げられていました。このようなことから、上記に記した開業助産師が増えない一つ目の理由は最近すこしづつ解決に向かっているようにも思えます。(一時の流行に終わらなければいいのですが)

もっと大きくて難しいのは、2つ目の理由「産科医が協力的でない」という方です。産科医の意見はこうです。「十分な医療機器や設備が整っていないところでお産をするなんてとんでもなく危険だ!」と。もちろん自分達の分野に助産師がもっと入ってきてしまうと、開業している医師なんかは死活問題ですから、こういうこともいいたくなるかもしれません。しかしながら、私達助産師にしてみれば、医療機器や設備が充実していることが本当に良いお産に繋がるかということです。立派な医療機器を持っている医師はその、機器に頼って自分の目や手で診るということをしなくなっていきます。設備が充実しているというところでは、その設備を使いたいがために、産婦さん本人の意見が反映されずに病院側主体のお産になりがちです。

実際私は産婦人科に10年近く勤務してきましたが、医師がお産のとき産婦さんを診るのは、何か異常なことがない限り、入院の時(診ないことも多い)とお産になる瞬間のほんの短い時間です。(妊娠期間中は別ですが、今回はお産の時に限定して話してます)
お産は初めてのお産で15時間くらいといわれますが、病院に入院してきてからも分娩までは数時間あります。その長い時間の9割くらいを助産師または看護師が観るのです。

個人的な意見ですが、10年間助産師をしてきて思うことは、よっぽど勉強熱心か情熱のある医師、またはセンスのある医師以外は、お産に関する判断は助産師のほうがよっぽど的確だということです。もちろん助産師にもいろいろいますので、みんながみんな同じではないですが・・・。

お産はけっこうスピリチュアルな側面を持っていると思います。なので、介助する側も、経験だけではなくその、センスや直感というものが問われる世界です。なので、医師でも助産師でも自分の技術や知識だけで判断するのではなく、いろいろな状況をふまえ総合的に判断できる人がお産を扱うのであれば、十分に安全で産婦さんに満足していただけるお産ができるのだと思います。

そこのところを、もっと産科医の皆さんにも気付いていただきたい所だと思います。日本の少子化問題に同じお産を扱う医療者として協力できないものなのでしょうか。

最後に法律の問題ですが、助産師が独立開業するにあたっての法律が改正され、開業がさらに難しくなりました。日本助産師協会ではその法律を見直すべく署名活動などを行っていましたが、実際問題として、世の中は少子化対策とは逆へ動いてます・・・・。

そもそも、妊娠・お産は自然の行為で病気ではありません。そこにもう一度帰って、もっと産む側のお母さん達のためになるように社会が変わっていってほしいものだと思います。

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コメント

なんちゃんさん、掲載していただいてありがとうございました。読んでくれたみなさんもありがとうございます。意見・感想のある方はコメントくださいね。

投稿: yo | 2006/08/22 13:11

よ、さん、ありがとうございました。みなさんのコメントをお待ちしています。第二段に予定しているのが医師から見た産科の現状と対応なので、それを比較して読んでいただくと、なお思うことがあると思います。お待ちください。

投稿: なんちゃん | 2006/08/24 10:49

とても興味深い内容でした。
私も1人目を個人産院で産み、満足いくお産じゃなかったので、二人目がもしできたら助産院で産みたいなと考えていたところです。

産院の先生と、その後の乳幼児訪問で自宅に来てくれた助産士さんと言ってることがいろいろ違っていて(母乳のこととか)新米ママは何を信じたらいいのか混乱した覚えたあります。

医療が発達したおかげで、乳幼児の死亡率が減ったという事実もあるでしょうが、その分自然なお産からどんどん離れていってしまったということもありますし、バランスが難しいなあと思います。

次の記事も楽しみにしています

投稿: べる | 2006/08/30 23:28

べるさん
旅行と合宿でお返事遅くなりました。

べるさんのおっしゃるように「医療が発達したおかげ」で、お産のときの子どもや母体にかかるリスクが大きく軽減されたことを医師は大きな成果と考えています。これは遅れていますが次の記事で書きたいと思います。その反面医師の側に「よ」さんが書いてくださったようなメンタル面でのケアという視点が落ちていることは否めないと思います。

そう、要はバランスなのだと思います。

投稿: なんちゃん | 2006/09/03 17:28

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