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2006/02/27

喜びを歌にのせて

2年前に入院してからは全くといっていいほど映画館に足を運んでいなかったのですが、ayako yanagisawa.さんのブログで知って面白そうだったので、本当に久しぶりに映画館に行きました。

この映画はスウェーデンが舞台です。北国の小さな村へ、天才指揮者と謳われ8年先のスケジュールまで埋まっていたような男が心臓を悪くして療養にやってくるのです。地元の牧師と話をして聖歌隊の指導をすることから物語が始まります。

スウェーデンでは国教会(プロテスタント系ルーテル派)の教会が町々にあるようで、牧師もその国教会の牧師なのです。毎週の礼拝の時には神をあがめ説教をし、村人の尊敬を集めているひとです。

しかしやってきた天才指揮者は、スタートから歌の指導をすることはありませんでした。そうではなくて、個々人が本来的に持っている声の資質を引き出そうとさまざまなワークショップを試みます。おなかから声を出すためにさまざまな運動をしたり、寝そべってお互いのおなかの上に頭をおき、人の声の響きを体感させたり・・・自分にとっては「電気曲馬団」時代の稽古や野口体操のワークショップを想起させて懐かしいものでした・・・そんな風に声を感じるところから始めていくんです。そしていよいよアカペラの合唱の練習へと移っていきます。

個々人の持っている声を束ねていこうとすると、そこにいろいろな問題が起きてきます。表面的には問題のなさそうな田舎の村でも個々人はいろいろな問題を抱えていました。価値観の相違はまだしも、DV(ドメスティック・バイオレンス)にあっている主婦、知的障害を抱えた青年に対する人々の目、相手に妻子があることを知らずに不倫に落ちて傷つく女性(相手が妻子もちなのを他の村人は知っていたのです)。人々が心の底からのハーモニーを生み出すためには、おそらくどんな社会にも存在するであろう人間として生きる中での葛藤を、本音で吐き出して和解し、あるいは見解を質し、あるいは具体的な救済の手を施す必要がありました。教会が示す規範や救いの言葉(パンフレットでは「タテマエ」と表現する解説者もいますが)には、実は本当に人々を癒し解き放ち、人間らしく生きるすべは提示されていなかったのです。

牧師の妻が聖歌隊に参加していることから、牧師自身も一時は気持ちを解き放とうとするのですが彼には出来ませんでした。結果的に彼に集まっていた尊敬の目はみなそっぽを向き、聖歌隊への参加者がどんどん増えていくと言う事態に陥ります。落ちた偶像と化した牧師は指揮者を銃で撃って自分も死のうとしますが果たせませんでした。

彼ら聖歌隊がオーストリアでのコンクールに招待され出かけることになります。ここで解き放たれた人たちとそうでない人たちの別れという儀式が営まれます。

コンクールでしかし指揮者は持病の心臓病を悪化させ本番の舞台に上がることが出来ません。メンバーは知的障害を持つ青年の声をきっかけに徐々に自分たちの声でハーモニーを作り出します。そのハーモニーは観衆の心を打ち、同調する人々がたくさん出て、会場全体が天にも届くようなアカペラハーモニーで埋め尽くされるのです。


日本の現代社会において起きているさまざまな問題。映画はこれらの解決にとっても一つの暗示となるのではないでしょうか。人々が持つ天性の声、資質を浮かび上がらせ、合唱で言えばテノールだったりソプラノだったりその人でなければ絶対に出せない声をすり合わせていく。そこで人々はそれぞれの抱える人生上の課題をも声に出していく。本音同士の話し合いが生まれ、タテマエでない落としどころに持っていくことで人と人がもう一度固くつながりなおす。人がうれしいと思うことを自分もうれしく思える、共有できる、そんな人間関係の再構築が今求められていると言う気がします。劇、踊り、ダンスもそうなのですが、「歌」もそういう力を持つすばらしい人間の知恵であり、それこそ「文化」と呼ぶにふさわしいものなのでしょう。

いくつかのブログ『百万回生きたねこ』・・の話 mononohazumi/ウェブリブログ.にとらっくばっくします。体調悪かったけれど、ちょっと気合を入れて書いてみました。

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コメント

なんちゃん、TBありがとうございます。

今・・あまり時間が無くって、ゆっくり記事内容を読めません・・今度また、ゆっくりじっくり読ませていただき、コメントさせていただきます。

無理なさっていませんか・・?ぼちぼちやっていきましょうね。

投稿: 水井パセリ | 2006/03/03 23:00

TBに、今気が付きました。ありがとう。

好きな映画です。
私の場合、頭で理解しようとしないで、映画を感覚的に捉え、それを大事にしています。それが出来る映画ってスバラシイ。

ここを読んでたら、また思い出してうるうるしちゃったよー。

投稿: AYAKO | 2006/03/05 13:44

とても感動的なお話です。

確か・・統合失調症の研究で知られている精神科医木村敏先生のご著書のなかで、
この音楽についてのお話を読んだことがあります。脳の働きというか精神状態の揺らぎは、音楽にこの上なく近いというようなお話でした。

思わず・・ああぁっと、そのことを思い出しました。

投稿: 水井パセリ | 2006/03/05 19:30

○AYAKOさん
とってもいい内容の映画でした。自分はうるうるしなかったけれど、している人もいました。自分は絵画もそうなんですが、細部まで良く見て印象を言葉で伝えようとする癖があるようです。だから分析的に見てしまいましたけれど、村人の暮らしの中にさまざまな問題があるのを赤裸々に描いていて、こういう映画はあまりないけれど本当に今の日本に示唆的だと思いました。紹介してくださってありがとう。

○水井パセリさん
音楽療法というのがありますけれど、非常に定義が幅広いですよね。狭義の音楽療法というのはコンサートホールで演奏できるくらいの力量のある人が、統合失調症や自閉症などのクライアントに即興でコンタクトしていくことで言葉では得られない効果を導き出すもののようです。自分も音楽家の友人を持ってはじめて知ったのですが、即興というのは大変高度な技術を要し、楽譜に載っている曲は当たり前に弾けるような人がやるものだそうです。

音楽というのはたんにくつろぎや癒しを与えるだけではなく、言葉以外の言葉として精神状態にシンクロしていくものなのかもしれませんね。

投稿: なんちゃん | 2006/03/06 23:47

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