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2005/11/10

「医者は金持ち」は本当か?

障害者自立支援法の記事続きは早急にアップします。今日はひとつずっと考えていたことについて・・・。

自分のかかりつけ医の歯医者さんは確かにお金持ちです。埼玉県内の某ショッピングセンターに歯科医院を構えていますが、ご自宅は都内です。いつも大変いい車で通勤なさっていて、職場のそばに夜遅くなったときのためにセカンドハウスをお持ちです。

しかし、「夜遅くなったとき」と書きましたようにその仕事はハードです。自分が閉店後残業して出てくるとばったり会うことがしょっちゅうでした。閉店時間が21時ですから、まあ診察・治療ははどんなに遅くても20時には終わっているのですが、そのあとにいろいろ仕事をお持ちのようです。それは医師の仕事とは別に経営の仕事があるからです。開業医ですから一般の経営者と同じでもあるわけです。二重に仕事をしているようなものなのです。

治療を受けていると、ご本人の腕もいいとは思いますが、それにもまして人使いのうまさに舌を巻きます。歯科衛生士さん、技工士さん、事務さんとも非常にいい仕事をしています。無駄な動きがありません。最終的に患者さんの状態を先生が確認する形できちんと責任を取っていらっしゃいます。診療中の集中力たるやものすごいものです。販売職なんかなんだかんだ言っても余裕がありますから・・・。収入が違うのは当然だと思います。

ここの歯医者さんのすごいのは、近隣に新しい歯医者さんが出来ても患者さんが減らないことです。一時的に減っても戻ってくると先生は言います。実際予約をしてあっても30分くらい待つのは当たり前、混んでいるときは1時間近く待つこともあるのです。そのため患者さんが待ち時間にお買い物をしてもいいようにポケベルを準備しています。そのほか24時間自動で電話予約が出来るシステムを導入したりするなど、いろいろな工夫をされています。こういうのを見るにつけこの先生は経営面でも優れているのだなと思わずにいられません。

最近病院の実情が分かってくるにつれて、勤務医の忙しさとそれに対する見返りの少ないことにびっくりします。自分は内部の人間として見ている訳ではないので伝聞でしかないのですが、たとえばエキブロ・メディカル.を丹念に見ていただくとお医者さんの悲鳴が聞こえます。ここではかんぞうのしんぞう先生の本「患者の生き方」(春秋社)に取り上げられている声を引用してご紹介します。これは東京都医師会の勤務医委員会がアンケートを行った結果の報告書から自由意見として書かれていたもののピックアップとのこと。


1、小児科の深夜の当直は現状ではほとんど通常勤務と同然の状態になっていて、睡眠時間はほぼ0である。翌日はまともな診療が出来ないだけでなく、判断ミス等が多くなり危険。体力的にも過重負担でありこのままの状態が続くなら小児科はやめるしかないであろう。深夜の患者は患者教育がしっかりしていれば来院せずにすむものを、そんな患者ばかり来院が続くときには精神的にもやりきれないものがある。

2、大学病院に勤務しています。ご多聞にもれず、経営状態はよくありません。したがって、いくら勤務しても(平均12時間)時間外手当はありません。夜間緊急手術で呼ばれれば、車を持たない私は、タクシー代が赤字となります。手当てがないのは仕方がないとしても、赤字となります。当院では、緊急手術(夜間)はすべて、外科医のボランティアで行われています。学生も敏感に感じ取るのか、外科入局が明らかに年々減少しています。このままでは、将来、深刻な外科医不足になります。外科医不足に気付いても、外科医養成には10年かかります。私は好きで選んだ道とあきらめていますが、今後の外科に非常な不安を感じています。

3、精神科の外来をやっていて一日に診られる限度は20人程度(学会などで知り合う欧米の医師も一日に10~20人程度しか診ないらしい)といわれている。しかし、先日、小生の外来には一日なんと115人の患者が受診した。一般身体疾患を診る科であるならいざ知らず「こころ」の診療科で、こうなってしまうのは、何かが間違っているのではないだろうか?(ちなみにこの日は、夜中まで、外来をやっていました。)

4、週休一日、月給5万で、お昼ごはんも食べられないぐらい働くなんて、一般常識的におかしい気がする。6年間も勉強した後も、親の扶養の健康保険に入り、生活を援助してもらい、これでは社会人として自立がいつまでもできない。みんな社会に出て働き始めるときは会社だって何も出来ずに入社し、学んでいかせてもらうのに、なぜ、医者だけこんなに給料が安いのか?世間の目線で考えて欲しい。

5、心臓外科の講師をしていますが、手術に関わる社会的責任が特に最近では大きく、病院からの保障は何もなく、月給は卒後20年で手取り36万円です。日本独特の、ハイリスク・ローリターンの労働環境で、対象が心臓病に苦しむ患者さんでなければ、とっくに辞めています。本当です。使命感とやりがいだけが支えですが、最近はこの医療自体にプライドが持ちにくく、とても若い有能な人が、よい研修を受けられるような次世代につながるような環境にありません。医療の将来は恐ろしいものがあります。


これを読んでみなさんはどうお感じになるでしょうか?こんな実態でも高い金をはたいて(人によっては予備校へ行って)、大学6年、研修医2年と言う負担にあなたは耐えられますか?自分は無理です。ちなみにこうした声なき声が集まって賠償保険を作ろうと言う動きがあるようです(ああ、資料を紛失しました・・・詳しくかけなくてごめんなさい)。

病院運営も企業と同じ経営の問題からは逃げられません。赤字の病院が多数存在する一方でそうした破綻病院などを引き受けて病院グループとして手を広げているところもあります。以前掛かっていたクリニックの先生が「病院も倒産するんだよ。倒産するとどうなるか知っているかい?病院の運営者が変わって、患者からは見えないところで医者の給料を下げたりしてリストラするんだよ」と話していたのを思い出します。

どんな経営手法をとっているのか定かではありませんが、うちの近所にはやたらと病院グループがあります。こちらをごらんいただくと分かるのですが病院グループ徹底分析 2005年版.板橋中央総合病院グループとか戸田中央総合病院グループ、上尾中央総合病院グループなど。他にも吉川市にもありますね。こういう病院は利益も出ているんじゃないでしょうか。大原の医療事務専門学校の就職先にもこうした病院グループが良く出てきます。

さらにこれから進むであろう国公立病院の民営化を自分たちが受け皿になって担おうとしているのが徳州会病院グループです。徳洲新聞 5月10日 月曜日 No.415.こういう病院の経営者はやはり医師の中の才覚のある人だと思いますが、そういう人は相当お金持ちなのでしょう。でもそういうのは医者に限らず実業家ならみんなそうでしょう。

「医者は金持ち」と言う幻想を捨てて、勤務医さんたちの声に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。さもないと国の医療はパンクするかもしれません。


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