3つのどん底
今は輝かしい成果を挙げている3つの施設があります。いずれも北海道にあります。
ひとつは何度も紹介している「べてるの家」。統合失調症や親の代から続くアルコール依存症でどん底を見てきた人たちが始めた商売が、いまや年商1億。鳩ヶ谷雑記: べてるの家.
ひとつは「旭山動物園」。札幌の円山動物園に倣って作られた日本一北にある動物園ですが、当初の賑わいもじわじわ無くなり、閉園か民間譲渡というところまで追い込まれました。しかし飼育員さんたちの「動物の本当のすごさを伝えたい」という熱意が手書きの看板や見せ方の工夫のアイデアを生み、だんだん人々の心をつかみ予算もついて、ここならではの施設もできてとうとう月間の入場者数が上野動物園を抜いてしまいました。
ひとつは「北星学園余市高校」。過疎地にある私立の高校で、定員割れが続き存亡の危機を迎えました。教職員が給料から4%づつの基金を積むとともに、全国から不登校生や中退者などどん底を見てきた子どもを受け入れました。生徒一人一人に教職員が歩み寄る中で、徐々に子ども達の心に変化が起こり、やがて大学へ進学する生徒まで出るほどの成果を挙げました。進学という果実は一面に過ぎず、ここで過ごした子ども達漢字も読めず、ひらがなでの作文も思うようにかけなかった子、がんじがらめの規則や偏差値教育から脱落して、1年、2年遅れて高校をやり直した子たちがここでかけがいの無い仲間を見つけて夢を持って卒業していく、そういう果実を実らせています。
どん底を見ること。後は這い上がるしかないところまで落ちてみて、それで見えてきた自分たちの理想、夢。そういったものを形にしてきた人たちがなぜか北海道という地に3つ集まっているのです。何がかれらを導いたのでしょう。それは「あきらめないこと」だったような気がします。「がんばる」というのは一時的な力の入れ方です。でも人間がんばり続けたら筋肉疲労を起こして、がんばった状態を維持し続けることはできません。「あきらめない」は「がんばり」から見ると負け犬が牛歩の歩みで進んでいるようにうつるかもしれません。でも「あきらめない」ことを続けるのは実は「がんばる」よりもずっと大変かもしれません。粘り強さが必要なのです。究極をいえば「人間をあきらめない」ことです。生き続けることに価値を見出すやり方です。でもここにこそ生きる喜びを見出すことができるのではないでしょうか。競争から脱落したからこそ見えた本当の価値。それを大事にしながら生き続けることが成果を生み、その物語が人を涙させる。
北海道というところは人間の底知れないパワーを引き出す力があるようです。
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