お粗末な性教育
わさびさんの記事にトラックバックします。すてきな奥さんなれるかな: 子供を産むなら大人になろう。そんな当たり前のことを言わねばならないこの現実。.
先月のべグライテンの例会の内容が児童養護施設の慰問ボランティアの話でした。高島君の話(横浜そごうで意図的に迷子にさせられ親が引き取りに来なかった子の話。その子はとても賢くて、なぜ自分が親から見捨てられたのかを知っているようで、絶対に自分の名前も親の名前も言わないので仕方なく見つかったそごうの住所から「高島君」と呼ばれるようになった・・・)やらなにやら、かわいそうな子ども達の話ばかりでいたたまれなくなったのですが、最後の話が自分をうーんとうならせました。
講演者の友人が北欧のある国でボランティアをしているのだそうですが、彼女から「日本はまだ養護施設なんてものがあるの?」といわれたそうです。というのもその北欧(ノルウエーかフィンランド)の国では性教育が徹底しているので、望まれない妊娠というのがほぼ皆無だそうです。そして以前存在した養護施設もホーム形式(具体的にどんな感じなのかは分かりませんでしたが)で、今はそれすら必要なく里親希望者はほかの国から孤児を引き受けるといいます。
確かに。自分が大昔に読んだ思春期の子供向けの性教育の本(小説仕立て)がまだありますが(「結婚ごっこ」ベルイクヴィスト 晶文社・・・・・・ちなみに訳者あとがきで「この本の出版ひとつとってみても、おそらく、児童文学界は、ご馳走を遠巻きにしたよわいいぬのようにうろうろするだけだろうし、親や先生にも子どもに勧める勇気のある人は少ないのではないか」と書いています。それが1982年のことで、しかも本国より10年遅れての出版だったのです)セックスありきではなくお互いの体を刺激しあったり抱き合ったりということでも十分お互いの愛情は確認できるということや、初めてのセックスはうまくいかなくて当然とか、コンドームは二人で手伝ってつけたっていいこととか、徐々にうまくなればいいなどということが書いてあります。以前ご紹介したスウェーデンの中学生向け社会科教科書には「みんなが性に関するすごい話をしていて、自分だけ取り残されていると感じるのは間違い。半数以上の同級生が同じように考えているのだ」と指摘しています。「多くの人が中学生時代に初恋の経験をします。しかし約3分の2の人が関係を持つのは卒業後です。20歳過ぎまで待つ人も大勢います」とあり、統計上の初体験の年齢をパーセンテージで示しています。これらは事実を知らせた上で「あせる必要はないよ」と呼びかけているように思えます。(「あなた自身の社会」 新評論刊)
日本では学校も親も性の話はしません。あるいは上手ではありません。思春期の子ども達は雑誌やロマンス小説で性のことを想像するしかありません。しかし女性向けの本では彼がものすごく大切に抱いてくれる、そばにいてくれるイメージばかり強調され、男性向けの本ではいかにセックスするかが攻撃的に書いてあるばかりです。映画だって良心的な作品でもベットで愛撫だけで終わらせるシーンなんてないものねー。絶対に最後まで行きますよね。しかもコンドームしている時間なんかないですよね。だから性の世界観がゆがむのはある意味当然でしょう。しかも最近の芸能人のいわゆる「できちゃった婚」が拍車をかけます。しなければ恋人と認められないような感覚を持っている子ども達や若い人(と書くと自分がそうではないみたいだな・・・)がほとんどでしょうね。街中で若い恋人たちに「お互いの体を大事にするんだよ」とコンドームを配りエイズ検査を簡単にやってあげるなんていうのは六本木の赤ひげと呼ばれる赤枝医師くらいでしょうか。鳩ヶ谷雑記: こんな産婦人科医もいます.
水谷先生の本でも援助交際でエイズをうつされて、投げやりになって仕返しとばかりに援助交際を続け骨だけのようにやせ細って亡くなる10代の女の子の話があります。真剣にこの問題を考えないと虐待も減らない、若い子のエイズはじめ感染症は増える一方というどうしようもないことになりますよ。
以前も似たようなこと書きました。やはりわさびさんの記事がきっかけでした。こちらもどうぞ小5の中絶って、どうよ。
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コメント
こんばんは。トラックバックありがとうございました。
いつもなんちゃんさんが掘り下げてくださる視点に勉強させていただいてます。
毎日新聞の記事、読みながらぽろぽろ泣いてしまったんです。
「産まないで」なんて書きましたが、気持はもう少し複雑だったかもしれない。彼女には、もう一度母になって、今度はちゃんと慈しんで育ててみてほしいという気持も、半分くらいはあるのです。今度は、ちゃんと自覚的に母親になってほしいって。
こういう事件を見るたびに、この人は妊娠中の10ヶ月、どんな気持で過ごしていたんだろうって考え込んでしまいます。胎児におなかを蹴られたとき、分娩の痛みを感じているとき、おっぱいをはじめてふくませたとき。産む性としての喜びを、すこしでも感じただろうかって。
セックスをすれば子供ができるということ。それだけのことを教えるのが、この世の中ではほんとうに難しいのですね。教育がままならないのならせめて、妊娠・分娩を経験するなかで、命について感じて、考えてほしいと思います。そういう感性を身につけること、考える力を身につけること。そんな教育も、必要なのでしょうね。
※また二重投稿になってしまったらごめんなさい。いつもお手数ですが、ひとつ削除してくださいまし。よろしくお願いします。
投稿: わさび | 2005/10/12 20:26
わさびさん、こんにちは。
二重投稿の件、もうよく分かっていますからコメントに書かなくても大丈夫ですよ。
昨日書いた少子化の記事でも触れたのですが、核家族化のせい(ばかりではないかもしれませんが)で命に触れる機会が減っています。誕生も、人の死も。食べ物でも生き物を食べている実感がない。命について洞察を深められないまま、お粗末な性教育のせいで望まない妊娠が増えている気がします。わさびさんには許しがたいことだと思いますが、夜回り先生の本などを読んだ実感では生を受ける子どものうち2割くらいは切実に望まれていなかった子どもではないかという気がします。育児放棄も、虐待も、元をただせばお粗末な性教育にあるという思いが深まるばかりです。
人間は本能が壊れた動物です。保育園では女の子が男の子と同じように立っておしっこをしようとしたり、トイレに行かずにうんこをして、それを興味深く眺めたり触ったりするそうです。全部教えていかないとだめなんです。今は興味本位の性の情報があふれていますが、あれが性のことのすべてではないことを教えられる機会がありません。本気で取り組まないと、目に見える虐待だけでなく、見えないところで心を病んだ子どもが成長の過程で自分のように精神疾患を発病するケースが多発すると心配しています。おっしゃるように命の教育が必要でしょう。
投稿: なんちゃん | 2005/10/14 09:23
こんにちは。
私もハッピーエンドの恋愛は
いつも「キス」で締めくくられる
少女漫画の世界で生きてきたので
現実の男世界?に向き合ったとき
のギャップにかなり自分が
バラバラになってく感じがしましたね。
少し前ですが今はこんな映画も出てきています。
「月とチェリー」
http://www.love-colle.com/page/moon/moon-index.htm
ちゃんと自然にコンドームをつけるシーンもでてきて、
女の監督なのでこういうところ、目が行き届いてる。
女の人に社会の中で好きにやらせてみたら
結構社会の中のいろいろな見方が変わってくるのだと
思います。
私は情報だけで観てませんが、
よろしければどうぞ^^
投稿: ぽっぽ | 2005/10/22 12:42
ぽっぽさん、こんにちは。
社会を一度女性の立場で作り直したらおっしゃるようにずいぶん変わるのでしょうね。たとえば妊婦さんが通勤ラッシュの電車に乗ると誰も席を譲らないどころか、いやな顔をされるそうですが、女性専用車に乗ったらすぐに席を譲ってくれたなんていう話が新聞に載っていました。
投稿: なんちゃん | 2005/10/23 12:32