« 言ったもん勝ち | トップページ | 虹(二次)会 »

2005/04/20

こんな時にこそ冷静に

中国国内における反日デモに反応して、日本人も学ぶ日中学院から金属弾が見つかったりと、物騒な話が続いています。

確かに中国政府の「責任は日本にある」という主張を耳にするにつけ、中国語を勉強したり、中国に親近感を持って度々旅行に出かけている人たちはがっかりだろうなと思うのですが、しかし私たちはこんな時こそ冷静にならなければならないと思います。

中国国内における反日デモには、デモに参加することで日ごろの鬱憤を晴らそうとしている人たちが大勢いるであろうということを気遣う必要があります。本当に「日本憎し」と思っている人もいるでしょうが、成都市でヨーカドーの窓ガラスを壊して公安当局に逮捕された人のほとんどが農民や失業者だったとの報道もあります(日経、多分8日の記事)。この報道によれば「拘束された人々は反日活動のことはよく知らず、ただ面白がってやった人が多い」とのこと。

昨日のNHKラジオ「NHKジャーナル」によれば、中国当局の主張は一歩たりとも変化がない反面、非公式に領事館の修理を業者が申し出たり、破壊された日本料理店に対して上海市当局から非公式に補償の申し出があったりするそうです。このことの意味もよく考えるべきでしょう。

確かに中国国内には、教科書問題や首相の靖国参拝、領土問題などで日本に対して反発を持っている人もいるでしょう。しかし自国を眺めた時、政治問題にそこまで入れ込む人と言うのはほんの一部で、多くの人は自分の日々の生活のほうが大事だと思っているでしょう。これは中国も同じだと思います。実際、先日も書いたように韓国でも竹島問題によって政府間のやりとりは緊迫していますが、デモなんか起きていないじゃないですか。多くの日本人も、嫌な思いをすることはあれど身の危険を感じるほどの緊迫した状況にはないと思います。

生活が大事ということを考えた時、中国と韓国の最も大きな違いは、中国にはとてつもない貧富の差が生まれていて国内に不満が高まっていることだと思います。中国が「インフレ無き高度成長」を続けられるのは、農村部を踏み台にしてこそなのです。都市の住民は「都市戸籍」、農民は「農民戸籍」と明確に分けられていて、農民戸籍を持つ人が農村の貧しさに耐えかねて都市に続々と出稼ぎにやってきます。ところが「都市戸籍」を持っていない農民は低賃金の定型労働につくことしか出来ないのです。「都市戸籍」を得る為には難しい要件があるのです。

豊かな収入を得られる「都市戸籍」の人々と、一生懸命働いても賃金が上がらない「農村戸籍」の人々。これだけ見ても「デモくらい起きるかも」と思えるではないですか。社会に対する不満が根っこで渦を巻いているから、中国政府は、なにかきっかけがあればそれが爆発するという危険に常にさらされているといえます。今回そのきっかけが「反日」と言う形で出ていますが、いつそれが政府批判に取って変わらないとは限らないのです。その意味で中国政府が日本に対して表向き強硬姿勢をとり続けるのは、自分たちに矛先が向かわない為といえます。一方で在外公館を守らなければ成らないという国の責務も履行しなければなりません。日本との関係悪化、治安に対する不安から日本ばかりか他の国からも投資が細るといったことは避けたい。北京オリンピックを控えイメージの悪化は避けたい。そういった中国内政の苦しい胸のうちをわれわれは汲む必要があるのではないでしょうか。

もちろん日本も政府の対応としては、きちんとしてもらうべきところはきちんとしてもらうと主張すべきです。特にガス田をめぐる排他的経済水域の範囲に関する問題や沖ノ鳥島にまつわる中国のこじつけについてはきちんとすべきでしょう。が、面子にこだわりすぎるのは得策ではないのでは?と思います。教科書問題も、日本は国定教科書制度ではないのに、検定の存在があたかも国が意図して歴史を歪曲しているかのように取られるのだと思います。靖国の問題でも鳩ヶ谷雑記: 自分の宗教観について.に書いたように、時の為政者が遺族に対して戦死者が無駄死にでないと思わせて批判をそらす為に「戦死者は神になる」なんていったものだから、未だにそれを引きずらざるを得ない面があります。靖国問題はA級戦犯の合祀や小泉首相の公式参拝だけではないと思います。

こうした両国の内政問題を総合して考え、落としどころを探すのが外交の役割だと思います。ここで日本側が加熱するようなことは絶対に避けるべきです。冷静になりましょう。

この記事を書くにあたり、昨年放送されたNHKスペシャルの中国を取り上げた番組(忘れてしまいました)と「中国農村崩壊」(NHK出版、2004年)の本を参考にしました。

|

« 言ったもん勝ち | トップページ | 虹(二次)会 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/60361/3779630

この記事へのトラックバック一覧です: こんな時にこそ冷静に:

« 言ったもん勝ち | トップページ | 虹(二次)会 »