地域一番店
昔は地域一番店になることが小売業の勝ち方の法則でした。地域一番店と言うのはその店の立地する商圏内で一番の売り上げシェアを取る店ということです。2番手、3番手は不利な戦いを強いられるというのが常識でした。
ところが10年ほど前、今の西武百貨店の社長になった大崎文明さんが池袋西武の店長だった頃に指摘していることがあります。「うちは店としては(池袋の)地域一番店かもしれないが、個々の売り場やショップはそれだけの力がない。寄せ集めの地域一番店だ。これからは個々の売り場やショップが東京の中で一番の店に成らなければならない。一番店の集合体が池袋西武と言う店でなければならない。」といっています。これはGMS(総合スーパー)が弱体化する中で、将来を見通した戦略であったと思います。大崎店長の下で池袋西武は大改革を実施して、収益を大きく改善しました。
今ショッピングセンターに求められるのは、特徴のない商品がとりあえずそろっていることではありません。魅力ある専門店がいくつあるかが大事になってきています。イオングループが、ジャスコ単体では利益が上がらないのに、イオンモールやダイヤモンドシティといったショッピングセンターのディベロッパーが大きな利益を上げているのがそれを如実にに示しています。
昔のショッピングセンターは大手スーパーや百貨店が核テナントになり、専門店はコバンザメのような物でしたが、いまや地位は逆転し、いかに魅力的な専門店が入っているかがショッピングセンターの命運を左右するようになりました。
もうひとつ10年前と変わったのは、昔なら例えば川口駅周辺と言う商圏の中で地域一番店を目指せばよかったのが、道路や鉄道の発達で消費者の移動範囲が広くなり、地域間競争が起こるようになり、さらに今はもっと広域のエリア化が進んでいるという点です。大宮地区ではルミネが一番店ですが、新都心にコクーンが出来まして、イオン与野ショッピングセンターができて、イトーヨーカドー大宮宮原店(ステラタウン)が出来まして、大宮サティとあわせてエリアそのものが拡大しました。南部では蕨あたりを中心線としてグリーンシティ(ジャスコ川口店)、ダイヤモンドシティ・キャラ、イトーヨーカドー錦町店、イオン北戸田ショッピングセンターが帯状に出来、浦和や川口といった既存の市街地から顧客を奪っています。この影響をもろに受けているのが浦和市街地でしょう。
グリーンシティにはユニクロや赤ちゃん本舗など、ダイヤモンドシティ・キャラでは無印良品の県内最大規模店、ニトリ(ニトリストと呼ばれる主婦もいるほどの人気雑貨・家具店)、エディバウアー、スポーツオーソリティなどがあり集客力を強めています。
今後はますます専門店の力が強くなり、百貨店や大手スーパーは戦略の転換を迫られることでしょう。
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