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2005/04/29

子守唄

かなり心の傷は治りつつありますが、まだ不安定で今日はめずらしく、うちに備蓄してあった日本酒やら泡盛やらを飲みながら夜の時間を過ごしています。火曜日から水曜日にかけては夜も昼も分からないくらいのぐちゃぐちゃなかんじでした。

少し心を落ち着けて考えるに、自分は小さい時から埼玉に住んでいて(最初は三郷でした)、いつも足はバスと電車でした。会社に入ってまる4年たったころ車を買いますが、それ以外はすべて電車とバスが足代わりでした。

電車やバスを使いこなすには、発達した地理感覚が必要なんだと思います。自分は今どの位置を移動しているかわからないと乗り物酔いします。ですから観光バスでどこだか分からないところを走る時や、船に乗るときはよく酔っていました。同じバスでもバスの形は関係なく、路線バスで停留所が案内されるものでは酔ったことはありません。船に乗るときは必ず船室ではなく外に出て、かすかに見える陸の形から「今この辺かな」と想像できるうちは酔わないのです。

そんな自分は、恥ずかしながら列車の音が子守唄でした。風呂に入ると唄が出るお父さんは沢山いますが、風呂場でつい列車の音をまねしてみたくなるのはほんっとうに恥ずかしい自分の癖です。

夜行列車に乗ったときなど、かたこん、かたこんとれっしゃが気持ちいいリズムを刻みながら進んでいくのは安心感がありました。自分の中で列車と安心はひとつの物といってもいいくらいでした。

しかし山陽新幹線でコンクリート片が落下するようになってから、気持ちの中に少し割り切れない感じが残り始めました。当時のJR西日本の南谷社長(現会長:引責辞任予定)は「緊急点検を」と言う声に一切こたえませんでした。乗り上げたら列車が大破するような落下物があったにもかかわらずです。「新幹線は国の重要なインフラであるからとめることは一切出来ない」。南谷氏のこの回答が自分の中で列車と安心という事柄に割り切れない何かを残していました。

その後尼崎のJR東海道線で、人身事故の処置に当たっていた尼崎の救急隊を特急列車が轢き殺すという事故がおきました。どういうミスが重なってこんな痛ましい事故がおきたのか、その検証はマスコミによってきちんとされないままでした。しかしこのとき自分の中では列車と安全を同一の物として捕らえられなくなっていました。特にJR西日本です。どういうわけか関東に住む自分たちの耳にもJR西日本の事故のニュースは度々飛び込みました。異常な多さ。衝突事故で橋の上から落下した車にJRの快速が突っ込むとか、JRの責任とはいえないような偶発的事故もありましたけど、それにしても多いなと思っていました。

月曜日の事故。電車の大破した様子は20分ほど叔母の家のテレビで見ただけでした。しかしその衝撃は自分の心の中に同じ勢いを持って伝わりました。「やっぱり起きた。」その晩から列車の「かたん、かたん」と言う音が子守唄でなくなりました。

マスコミが社長をつるし上げる会見の場面をほんの少しだけ見てしまいました。尼崎の救急隊員轢死事故や山陽新幹線のコンクリート片落下の時にこのくらいやってくれれば今回の事故は起きなかったかもしれない。何で今になってつるし上げる?今になって徹底究明(実はしていないが)の番組をやる?もっと早くやれよ。自分の子守唄が安全と一体であった頃に戻して欲しい。

月曜日の段階でこれだけのことを文章にするだけの気力が、自分にはありませんでした。それでわさびさんのブログを雨宿りに使わせていただきました。勝手なわがままを許してくださったわさびさんに心より感謝を申し上げます。

今日の夕方5時くらいに口から「かたん、かたたん」と言う声が漏れ出しました。はっとしました。それから随分すっきりしてきました。食事が食べられるようになりました。それまでは押し込む感じだったのですが。人と冷静に会話できるようになりました。コーヒーを飲めるようになりました。ココログを書けるようになりました。

まだ、かなり不安定感があるので、明日、土曜日ですが開いているはずの病院へ行きます。ご心配をおかけしました。

#今回引用はないのですが、関連性と言う意味でわさびさんのブログにトラックバックします。

#5月7日追記:事故に対する考え方とマスコミの報道姿勢に対して共感するところがあり、Tompeiさんの葉桜日記: JR脱線事故に思うこと(その2).にトラックバックします。

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コメント

こんにちは。お加減いかがでしょう。
「共振」の記事を拝見して、なんて声をかけて差し上げたらいいのかわからなくて、ただおろおろしていました。ごめんなさい。何もできないわたしです。ここで、遠くから(いや案外近いんですよね)、ただ祈っています。

鉄道に寄せるお気持、この記事でよくわかりました。なんちゃんさんの安心の拠り所が、少しでも早く、元に戻ってくれますように。

投稿: わさび | 2005/04/30 18:20

ご心配をおかけしました。お気持ちに深く感謝します。

日本全国ほぼ全都道府県を旅行しましたが(かすってもいないのは鳥取と和歌山、県庁所在地にいったことがないとなるとプラス島根、徳島)ほとんど鉄道とバスでの旅でした。車での旅行と違って、(特に鈍行の旅だったりすると)方言にも食べ物にもグラデーションがあって、それを感じるのがとても楽しいです。そんな身近な自分の足だからこそ、せめて国内は安全とイコールであって欲しいです。

JR西日本は、遅れが常態化していた(というのが、いかにムリなダイヤを組んでいたかの証明ですが)近畿圏の列車ダイヤを少しゆとりを持たせることに決めたとか。500人近い死傷者の重みが決して風化することの無い様願うばかりです。

投稿: なんちゃん | 2005/05/01 21:36

こんにちは。
ご丁寧なリンクまでしていただいて、ありがとうございます。

エネルギーが徐々に回復しているようで何よりです。

JR西日本バッシング報道が続き、マスコミに対する違和感は増すばかり。なんちゃんのおっしゃるように、マスコミは肝心なときには逃げ腰なのに、自分たちが優位に立てるときだけ、ここぞとばかり相手をたたく姿勢に首をかしげるばかりです。世の中全体がそんなふうになってしまいそうで怖いです。

投稿: Tompei | 2005/05/09 14:24

TOMPEIさん、こんにちは。ようこそお越しくださいました。

JR西日本を責める前にマスコミ自身が反省すべきおかしな体質があるように思います。それは身の安全は確保しながらものを言うという態度です。

イラクへのアメリカの武力行使の際、現場に行って報道していた記者の多くはフリーランスの人々でした。多くのマスコミがフリーランスの記者のレポートをまる流ししていました。そのくせ人質事件がおきると「自己責任」論を展開しました。今の列車事故報道にしても同じで、なんだか集団いじめを見ているようです。

今回の事故に関して5月6日の「NHKジャーナル」(ラジオ)では、レスキュー隊より早く現地で会社を挙げて救助活動に当たった地元企業のことを放送していました。私たちが欲しいのはこうした別の視角からの情報です。

取材活動と言うものがとてもお粗末。そのくせに「表現の自由」などと開き直る。少し引いてみれば、いくらでも事故の裏にある構造的問題に気が付くだろうに・・・。

ブログを通してこういう声がもっと上がると少しは変わっていくかもしれませんね。今まで自分たちがこんな形で声を上げることすら出来なかったのですから。

コメントありがとうございました。

投稿: なんちゃん | 2005/05/10 14:00

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